経済産業省が提唱する「社会人基礎力」として挙げられている3つの能力を、ボードゲームが育てる助けとなるかを考えます。
この記事のポイント
ボードゲーム×知育、ボードゲーム×教育のポテンシャルは高い。
- ボードゲームへの関心は年々高まり、遊ぶ人も増加している。子どもも遊びが大好き。
- 考え抜く力やチームワークなど、社会人基礎力を育てる助けとなる可能性がある。
- どのようなボードゲームが何の能力を育てるか、研究が進められている。
なぜボードゲーム?
日本で徐々に知名度も人気も高まっているボードゲーム。“電源を使用しない”アナログゲームのイベントで国内最大規模の「ゲームマーケット」の参加者数は、年々増加しています。
純粋な楽しみとしてボードゲームへの関心が高まっていることが背景にあると考えられますが、じつは教育の手段としてボードゲームを活用することも、以前から行われています[1][2]。
では、どういった能力が育つことを期待できるのでしょうか?
「社会人基礎力」となる3つの能力
能力についての考え方として、経済産業省が提唱する社会人基礎力[3]というものがあります。
次の図は、社会人基礎力の説明図です。3つの能力として、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を定義しています。
これらの能力を育てる場として、大学が挙げられることが多いようです。(おそらく、もうすぐ社会人になる人たちだからでしょう)
しかし、もちろんこういった能力は幼少期から育つものと考えられますし、その必要性を述べている方もいます[4]。
ボードゲームは、社会人基礎力を育てる助けとなるのでしょうか?
ボードゲームが社会人基礎力を育てるか?
社会人基礎力の3つの能力、さらにはそれらを構成する12の能力要素が、ボードゲームで遊ぶために使う要素と関係があるか分析した研究があります[5]。
この研究では、いくつかのボードゲームについて、関係すると思われる社会人基礎力をアンケート調査し、数値的分析による関係性の紐解きを試みています。
ただし、ボードゲームの何の要素が社会人基礎力へどの程度影響しているか、あるいはボードゲームで遊ぶことが能力を伸ばすのか、といったことは今後の課題とされています。
僕の子どもとボードゲーム
僕個人の体験を紹介すると、ボードゲームへの子どもの食い付きがとても良く、大きな可能性を感じています。
4歳の息子とボードゲームで遊ぶと、集中してあれこれ考え、次の一手を決めていることが見ていて分かります。
足し算をする必要があるボードゲームでは、自分から進んで計算していますし、繰り返すことでスピードが上がってもいます。
考えることを目的とした”勉強”では反応が悪いですが、考えることが手段となる”遊び”には食い付く。あとはこれが、考えることが楽しいという気付きにつながり、勉強の楽しさへつながればいいな、と考えています。
これが、ボードゲーム×知育の可能性を探るきっかけとなりました。
この研究の今後
まだ文献調査を始めたばかりなので、今後、情報の量と質を高めていく予定です。
特に、この分野の研究は日本よりも海外の方が圧倒的に活発なので、海外論文の調査は必須と考えています。
さらに、子どもの知育向けボードゲームを制作していまして、その紹介や子どもの反応を発信できたらと考えています。
知育におすすめなボードゲーム紹介
参考文献
[1]有田隆也:ドイツボードゲームの教育利用の試み:―考える喜びを知り生きる力に結びつける―,コンピュータ&エデュケーション 31(0),pp34-39, 2011.
[2]大谷直史:コミュニケーション教育としてのボードゲームの開発, 鳥取大学教育研究論集 = Journal of educational studies, Tottori University (5), pp67-74, 2015.
[3]経済産業省webページ「社会人基礎力」, https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/, アクセス日2022/3/24.
[4]ベネッセ教育総合研究所webページ「第19回 子どもの将来と教育(1)-「社会人基礎力」の観点から考える」, https://berd.benesse.jp/berd/berd2010/center_report/data19.html, アクセス日2022/3/24.
[5]柳町真子, 布川博士:ボードゲームがもたらす効果の分析と一般化のための検討,日本感性工学会論文誌 19(4),pp361-368, 2020.